お茶とコーヒーを行き来する
朝起きて、仕事前にキッチンに立って悩むのは、まずコーヒーかお茶、何を淹れるか、だ。
その日その時の気分で選ぶこともあるし、その日の仕事の状態で最初の一杯を決めることもある。
そうだ、今日は新規のプロジェクトについて、壁打ちのMTGから始まる。だからリラックスしながらも集中できるお茶にしよう。
愛用の透明な樹脂製の急須に、茶葉とすこし湯冷まししたお湯を注ぐ。
蒸気でくぐもった透明な急須の中、じわじわと茶葉が華開くように広がっていく。
じっと息をひそめるように待つ。こうしてじっくりと飲み物を淹れられるのは、在宅勤務の特権な気がする。
いつものマグカップに淹れた茶を注ぐと、緑茶の青々とした香りが広がる。決して強い香りではないが、ナチュラルな感じが落ちついた気持ちにさせてくれる。
お茶と共に始まったMTGは良い感じだった。初めてのメンバーともリラックスして打ち解けられた気がする。
午後は上司と別のプロジェクトの進捗の報告とテコ入れを相談する。上司はアツいエネルギッシュなタイプだ。彼に気おされないように午後はコーヒーでガッツを入れよう。
こんな風にお茶とコーヒーを行き来する。
でもこんな使い分けができるようになったのは、割と最近だ。
ずっと仕事中はコーヒーを飲んでいる人間だった。
でも、カフェインが気になって、代替の1杯としてお茶を飲むようになった。
最初は急須もないからティーバッグで飲んでいた。でも、なんだか味気ないなと思い始めた。
リーフで淹れたら違うのかな…そうなると急須が必要か…でも、もし気に入らなかったら、棚の奥で場所だけを取る存在になる気がして、急須を買う気にはなれなかった。
ある時、マグカップでも淹れられる方法があると知った。茶葉はマグカップ1杯分に合わせたものがあったので、それを試しに買ってみた。
良い緑茶を淹れる時はお湯は少し冷ますといいらしい。急須代わりのマグカップにまずはお湯を入れ、もう一つのマグに移す。お湯を移すって意外と難しいななどと思いながら、お湯で温まった空のマグに茶葉を入れる。そしてお湯を戻したら、小皿で蓋をして1分半。時折、小皿をずらして中を伺ってみるなどして、まるで何かを楽しみに待つ子供のように待った。
茶こしがあればよかったんだろうけど、残念ながら当時の我が家にそんなものはなかった。
なので、口にそっと大きめのスプーンを添えて、茶葉が入らないようにそっとお茶を移していく。
なんてこぼれやすいんだ。若干だが茶葉も入ったぞ。でも、及第点だろう。
広がる香りも、ティーバッグで淹れる時よりずっと強い。
飲んでみると、その濃さに驚いた。青々とした香り、苦味もあって、でも一番はまろやかさだ。
主張は強すぎず、でも飲み物単品としてずっと飲んでいられる。食べ物との相性も広そうだ。
キッチンに突っ立ちながら、僕はしばし呆けてしまった。
美味しいじゃないか、お茶。
これが、最初のリーフで淹れた一杯だった。

急須を探し始めた
しばらくはマグカップで淹れて飲んでいたけれど、やはり若干茶葉は入るし、こぼれるし不便ではあった。
継続的に飲むだろうという確信を得たところで、急須を買おうと思った。
でも祖父母の家にあったような、あの焼き物の急須は、なんとなくテンションが上がらなかった。
調べてみると、急須・・・いや、お茶を淹れるガジェットも今は色々あることを知った。
昔ながらの瀬戸物ではなく、樹脂製で透明だったり、形もスタイリッシュだったり。コーヒードリッパーの形をしているが、お湯がドリッパーに滞留できるものもあった。
デザインも多種多様だ。昔ながらの形をスタイリッシュにしたもの、色付けが可愛いもの、機能性を重視したもの…
コーヒーを始めたころ、ドリッパーやケトルを延々と調べていた時間と、同じ感覚だった。
「これは沼だ」と思った。
お茶にも、あるんじゃないか、こういうの。
淹れることが、自由になっていった
急須を買ってから、淹れ方で遊ぶようになった。
湯温を下げると、まろやかになる。上げると、苦渋味もでて、一気にパンチのある感じになる。
抽出時間の長短で、濃さも調整できる。
寝不足だからシャキっとしたい日は、湯温を上げて少し抽出時間を短くしてみる。さっぱりとしながら、グッと苦味が前に出ている感じが身体を起こしてくれる。
逆にのんびりしたい日は、湯温低めでじっくり淹れる。出汁のようなまろやかな味わいが、緑茶の青々しさとともに広がる。
そうやってこだわれる半面、実は驚くほどラフに楽しむこともできる。
会議の直前、時間がないがどうしても飲み物が欲しい。
そんな平日のドタバタの仕事中、僕のデスクの傍らで本領を発揮するのは、最初の一歩として手に入れた、あの個包装のお茶だ。
真っ白な箱から一袋、ピッと封を破って、茶葉を急須に放り込む。
マグカップ、そして湯冷まし用のポットに移したお湯を急須に注いだら、マグと一緒に急いでPCの前に戻る。
会議にログインして、合間を見て画面に映りこまないところでこっそり急須からマグカップに注ぐ。
急いで淹れたって、リーフならではの香りとまろやかさがある。
丁寧な暮らし代表のような印象のお茶だが、実はライトに楽しむことも十分できる。
どちらが正しいもない、お茶も嗜好品なのだから、飲む人が選んだ方法がその人にとっての正解だ。

気づいたら、お茶とコーヒーを行き来していた
コーヒーは今でもほぼ毎日飲んでいる。
ただ、そこにお茶という選択肢が加わっただけだ。
気分で、体調で、状況で…自分に今一番合ってると思う一杯を選択できる。
とても自由だ、と思う。
さぁ今日は何を飲もうか。
気軽に試せる1煎ずつのお茶
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